はじめての

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 チョコボイーターを撃退した礼として、一行はチョコボを無料で借りられることになった。

「チョコボに乗ったことはあるのかい?」

 ブラスカが、チョコボの胸の辺りをこちょこちょと撫でてやりながらアーロンに問う。

「実は一度もないんですが、うまく扱えるでしょうか……」

「大丈夫。このようすだとよく人に慣れてるみたいだし、すぐに乗りこなせるようになるよ」

 飼育員に支えてもらいながら、アーロンはチョコボの背中にまたがる。おそるおそる撫でてみると、愛くるしい声で喜ぶように鳴いた。温かく黄色い、やわらかな生き物に、安心感を抱いて思わず笑みがこぼれる。

 

 ふと、こちらに向かってスフィアを構えているジェクトと視線が合う。笑いは一瞬で引っ込んだ。

「……おい、何してる」

「ん? 記念すべきアーロンの初チョコボを撮ってやろうと思ってよ。成長の記録として」

「俺はあんたの子どもか?」

「アーロン! こっちにも視線をくれ」

 振り向けば、ブラスカの手にもスフィア。

「ブラスカ様まで、やめてください!」

「さっきの表情すごくよかったのに、うまく撮れなかったんだ。もう一度見せてくれないかな?」

「な……」

 あっけにとられる青年をだしにして、中年二人がにわかに盛り上がる。

「アーロンメモリアルとか作れそうじゃね?」

「いい考えだね。ああ、そうするとルカでアーロンの初めてのブリッツ観戦を撮影してなかったことが悔やまれる……」

「うーん、ちっとでも映像残ってないか、後でスフィア見てみるわ」

「編集なら多分ルカに行けばできると思うから、少し寄っていこうか。……あ、その時にもう一回観戦して撮影すればいいのか」

 からかっているのか本気なのかわからない年長二人にもてあそばれて、そう固くもないアーロンの堪忍袋の緒が切れた。

「あんたら、いい加減にしろ!」

 

 チョコボを三頭占有してはしゃぐ一行のやや後ろ、チョコボ屋が密かにため息をつく。召喚士一行、ましてやチョコボイーターを退治してくれた恩人にとてもこんなことは言えない。言えないのだが。

(何でもいいからさっさと乗って、返してくれないかなあ……)

 チョコボの回転率を高めないと、商売あがったりなのだ。一向に出発の気配がない三人に、彼女はもう一度小さく、しかし先ほどよりは大きめに息をついた。